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コスモスの 影重なって 遍路道

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 さぬき市地方は台風第12号が九州の西海上を北上し湿った空気が流れ込むため、夕方を中心に雨や雷雨となるらしい。気温は24.9度から29.5度、湿度は92%から78%、風は3mから5mの東南東の風が少しばかり。台風のせいか蒸し暑い一日になった。明日の5日は、台風第12号の影響で、引き続き湿った空気が流れ込むため、概ね雨や雷雨となる見込みらしい。

 

 さて、今日はご案内の通り、さぬき市主催の「おへんろつかさ養成講座」の第二回目で長尾寺現地研修会が行われる日。おへんろさんの宗教的案内人は「お先達さん」。私たちは、遍路道沿いの観光案内ガイドで、今日は、その観光ガイドさんを養成するお勉強会である。

 

 まずは、午前8時過ぎから駐車場係から。一般のお遍路さんと区別して、受講生用の駐車場へ案内することから始める。

 

 長尾寺さんの客殿をお借りしての1コマ目は、志度まちぶら探検隊ガイドの近藤先生から、「ガイドの仕方・ポイント」についての講義を受ける。ガイドの心得やコースプランの作り方、話し方、歩き方などのレクチャーを受ける。

 

 近藤ガイドは、マイクを使わない。そのほうがかえって注目してくれるし、聞こうと耳をそばだてるのだそうだ。声も大きくせずに普通に話すほうがいいそうだ。私はついつい、声を大きくしてしまいがち。

 

 休憩を挟んで2コマ目が私。この経幢のお話とか・・・

 

 山門の意味とか、この仁王さんが歩いてきたお話なんぞと基本的なお寺の歩き方やマナー、手水場での手水の使い方などのお話。一般のお客さんをいかに案内して、長尾寺さんを紹介するのかがテーマである。

 

 これは、本堂向背前にある彫刻であるが・・・。

 

 このほうきについてのお話を、先輩の前田チーフ・ガイドが説明する。そ、シュリ・ハンドクのお話である。シュリ・ハンドクとは、『仏説阿弥陀経』に、お釈迦様の弟子たちの名の七番目に周利槃陀伽(しゅりはんだか)と出てくる人のことである。十大弟子の一人に数えられる方であるが、この人はいわゆるオツムの弱い人であった。弱いどころか、自分の名前も書けない。名前を呼ばれても周りの人から言われて、ようやく自分のことかとわかるほど。だから、お釈迦様の教えを聞いても理解できないし、すぐに忘れてしまう。でも、悟りを求める心は人一倍あった。

 

 でも、彼にはどの修行も無理だった。そこで、お釈迦様が彼に与えた修行はお掃除だった。一本の箒を与え、「垢を払わん、塵を除かん・・・」と唱えさせ、精舎を掃除させた。彼は一心に掃除をした。何年もたったある日、シュリハンドクはお釈迦様に「 どうでしょうか。きれいになったでしょうか?」と尋ねた。お釈迦様は首を振って、「駄目だ。」と言われた。どれだけ隅から隅まできれいにしても、「まだ駄目だ」といわれる。シュリハンドクはそれでも黙々と掃除を続けた。ある時、子どもたちが遊びにやってきて、せっかくシュリハンドクがきれいに掃除をした所を汚してしまった。シュリハンドクは思わず箒を振り上げて怒鳴った。「 こら!どうして汚すんだ。」その瞬間、彼は本当に汚れている所に気がついた。

 

 それ以来、汚れが落ちにくいのは人の心も同じだと悟り、ついに仏の教えを理解して、阿羅漢果を得たとされる。そして、お釈迦様はシュリハンドクが一生懸命に掃除をしている姿をいつも手を合わせて拝んだという。シュリハンドクはどのようにして心の掃除をしたのだろうか。次々と生じてくる心の塵や垢(煩悩)をどのようにして掃除したのだろうか。まず思い至ることは、自分の心はきれいにしたと思っても、また汚れることである。でも、これは掃除と全く同じなのだ。

 

 次に使う人のためとか、自分の続ける意志を高めるためではない。「掃除を続けること」そのことが大事なことなのだ。心の垢を流し、心の塵を除くことをし続けること。これがシュリハンドクの行ってきたことなのだ。シュリハンドクのように、汚れたらまた掃除をするということは、私たちの生きる姿を表わしてはいないだろうか。

 

 法然上人は「愚癡に還って極楽に生まれる」といわれた。親鸞聖人は「よしあしの文字をもしらぬひとはみな まことのこころなりけるを 善悪の字しりがほは おほそらごとのかたちなり」(正像末和讃)と残された。シュリハンドクの話は、こんなところにも残されていた。

 

 茗荷(ミョウガ)とは「名前を荷う」と書くそうだが、これは、自分の名前も覚えられずに、名前を書いた看板を背負っていたシュリハンドクの墓から生えてきたからだと言われている。そこから、「茗荷を食べると物忘れをしやすくなる。」と言われるようになったのだとか。

 

 3コマ目は、長尾寺住職の木村俊雅師からの講話を頂き、その後、本堂や大師堂などの内部を拝観させていただき、真言宗から天台宗に転宗したいきさつなどのお話を伺うことができた。

 

 今日の掲示板はこれ。「ああ、そうだ、と気がついたその時があなたのバースデイ」という中村天風さんの言葉から。天風さんの言葉に寄れば、人間の心は「人生の一切をよりよく建設する力があると同時に、また人生をより悪く破壊する力もある」と指摘する。早すぎもせず、遅すぎもせず、まさに気がついたそのとき、「あ、そうだ」と思ったそのときこそ、自分自身にとっての「悟り」の一瞬なのである。天風さんは言う。「あ、そうかと気がついたそのときが、新しいバースデイである」と。自分の人生の中に、「いっぱいのバースデー」を作って、いつも新鮮な自分自身でありたいものだ。

 

じゃぁ、また、明日、会えたらいいね。


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